ice_blog

思ったことを忘れないように、考えたことを思い出せるように

Milky Way

僕は眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯ひとつの絆として天空を通過しつづけているスプートニクの末裔たちのことを思った。彼らは孤独な金属の塊とし て、さえぎるもののない宇宙の暗闇の中でふとめぐり会い、すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。かわす言葉もなく、結ぶ約束もなく。


スプートニクの恋人』 / 村上春樹
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朝起きて、布団を干して、ハンバーガーを食べたりする休日です。

「一年に一度しか会えないというのはそれほど大きな問題ではない、誕生日も運動会も学芸会も、一年に一度しかないイベント事は多い、重要なのは自分の会いたい人が対岸で、同じように自分に会いたがっている、ということであり、それこそが語るに値する奇跡ではないか」

という内容の文章を以前どこかで見ましたが、七夕になるとそれを思い出します。そしてそれを思う度に、本質とは見えやすい場所に落ちているものではない、と思うのです、そんな七夕の夜でした。


文明は進歩した、携帯電話が発明され遠方の人とも手軽にコミュニケーションを取れるようになった、それでも人と人との距離は縮まらない、彦星と織姫が手軽なツールでコミュニケーションを取ることが出来たら二人の距離は縮まっただろうか。

昔の友達と連絡を取るたびに「今度ご飯食べにいこう」、「今度飲みに行こう」、そんな会話が交わされるが、それをどれだけ実行できたかと考えると、自分の場合交わした約束の十分の一も果たせていないと思う。

距離的に近くても、遠くても、会いたければ会いに行くし、その必要がなければ積極的に会うことは難しい。

そういう点で森博嗣はとても面白いことを言っている。

「どこにいるのかは問題ではありません。会いたいか、会いたくないか、それが距離を決めるのよ。」

すべてがFになる』 / 森博嗣

 

文明によって人と人との距離は縮んだか、否、人との距離に文明は影響しない。

 

すべてがFになる (講談社文庫)

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