夏の陽射し
僕はきっと旅に出る 今はまだ難しいけど
初夏の虫のように 刹那の命はずませ
『僕はきっと旅に出る』 / スピッツ
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初夏の虫のように刹那の命をはずませて、何年か振りに一人で旅行に出てみた。急に空いたスケジュールを埋めるようにチケットを取り、北海道を出て進路は西へ。
関西国際空港から更に西へ、久しぶりに新幹線に乗り、各駅停車に乗り換え、フェリーに乗り、ようやく到着。
安芸の国、宮島。
蝉が鳴いている、波が打ち寄せる、テレビや小説やアニメや映画で見ていた夏を思い出した。
今まで知っていた夏との違いを肌で感じながら、海際の遊歩道を歩いていると夕立があった。
それはさながら外から入ってくる様々な穢れを落とす儀式のようでもあった。
潮の引いた干潟を鳥居まで歩く。
打ち寄せる波が、薄い布を一枚ずつ掛けていくように干潟を覆っていく、太陽は山の向こう側に沈み壮大な夕陽を作っていた。
気付くと3時間も経っていた。
そうか、ここは神の島だったのか。その言葉が自然と頷ける風景だった。
もしかしたら、こういう美しい風景を誰かに伝えようとして言葉が生まれたのかもしれない。古くから神として信仰されていた島でそんなことを思った。