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思ったことを忘れないように、考えたことを思い出せるように

かぐや姫の物語の話

両親は、娘として生まれたからと言って、愛し方を変えるようなことはしませんでした。学校でも、女の子だからと言って、束縛されることはありませんでした。指導してくれた方々も、いつか子どもを産むからと言って、私の成功に見切りをつけるようなことはしませんでした。

HeForShe Speech at the United Nations / Emma Watson
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以前ラーメン共和国の前を通ったら、「共和国に国王誕生!」というポスターが貼ってあった。共和制なのに君主とはまたおかしなことをやりだしたんだな、と思っていたらその国王には杉村太蔵さんが就任したようで、あまり物事を真面目に考えてはいけない、というのを今一度思っている。(国王じゃないくて大統領にすれば良いのに、もしくはラーメン共和国からラーメン王国に改名するとか)

 

そんなくだらないことばかり考えているうちに『かぐや姫の物語』がレンタル開始されたので見てみた。
内容的には竹取物語で、多分どこかで習ってはいるはずなんだけど細部まで内容を憶えていなくて、なんとなく知っている体で見てみた。竹から生まれて月に帰るやつでしょ的な。

かぐや姫の物語 [DVD]

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 Amazonの紹介文は

竹の中から生まれ、すぐに成長して美しい娘に育ち、求婚者たちを次々と振ったあげく、満月の夜、迎えにきた使者とともに月へと去ってしまう――かぐや姫は いったい何のために地球にやってきて、なぜ月へ帰ることになったのか。この地で何を思い生きていたのか。かぐや姫の罪とは、その罰とはいったい何だったの か。本作『かぐや姫の物語』は、誰もが知る“かぐや姫"の筋書きはそのままに、誰も知ることのなかったその「心」を描くことで、日本最古の物語に隠された 人間・かぐや姫の真実が描き出されました。

とあるが、見た感じ『いったい何のために地球にやってきて、なぜ月へ帰ることになったのか』ということよりも『誰も知ることのなかったその「心」を描く』の部分が重視されて作られている。なので『かぐや姫罪と罰』なんてキャッチコピーが出てますが、罪と罰の謎を明らかにするミステリーというよりはライフストーリーというかドラマというかドキュメンタリーというか。

 

そこまで重点的に描かれていない罪と罰を想像するに

罪:穢れた地球の世界を憧れたこと
罰:穢れた地球で暮らして自分の思い通りにならないことを知りなさい、ちなみにあとで記憶消すけどね

ということになる。罰というよりもご褒美的な気もするし、そもそも罰を受けてるときの記憶消すって全然矯正させる気がないというか、近いうちにまた同じ罪を犯しそう。

 

さて、地球に憧れ名ばかりの罰として地上に降り立ったかぐや姫を翁は大事に大事に育てる、おまけに姫なんて呼んじゃう、子煩悩というか親馬鹿というか。そんな姫の幸せを考えた翁は『この子は都へ行き高貴な方と一緒になるのが一番の幸せに違いない』と思いつく。善は急げ、竹から黄金も出てきた事だし、これを使って都に屋敷を建てよう。家庭教師もつけよう。偉い名前ももらおう。すべては姫の幸せのため!

ここらへんまでは原作通りのような気もする。それを姫はどう思ったのか、多分この心の空白部分を映画で一番描きたかったんだろう。それは、

『鳥や獣のように自由に生きたい』

ということ。『お屋敷で礼儀作法やお琴の勉強なんてやりたくない、自由が一番!高貴な方?なんで顔も知らない人と一緒になることが幸せなんよ!昔か!』とは言っていないけど、そういうこと。

 

そんなかぐや姫の心情は現在では共感されるのかもしれない。実際に見たあと思い出したのは、エマ・ワトソン国連でのスピーチだった。

エマ・ワトソンが挑戦する“新しいフェミニズム”の取り組み [via: UN Women 2014] - 備忘録√y

このスピーチは『一人の人間として評価されること』を述べているものだけど、その根幹にあるものは『男性でも女性でもなく、個人としての人間の自由』だ。

『高貴な人の嫁に行くこと』や『幻の宝石のように扱われること』が幸せではないというかぐや姫の考えと妙に足並みが揃っているような気もする。
竹取物語は日本最古の物語なのにも関わらず、今回のかぐや姫の物語が真新しく共感できるのは物語の空白部分に現代的なものを入れて作ったからだろう。

もしかしたら男女の差別がなくなり一人の人間として評価される時代が来る、今はそんな過渡期にいるのかもしれない、なんてことを少し考えたりもするし、こういう考えやテーマの作品は今後多くなっていくような気もする。

 

以前に読んだ建築家の本に「古いものを建て直すときには当時使っていた手法や材料ではなく最新の手法と材料を使う、直したのがわからないようにするのではなく今を残す」というようなことがどこかに書いてあったのを思い出した。こういうリメイクというか再構成の仕方もあるんだな、と膝を打つまではいかないけど、そんな映画だった。(なんだか最後の最後でぼんやりとして締まらない終わり)