ice_blog

思ったことを忘れないように、考えたことを思い出せるように

戦争プロパガンダ

「そこで、あんたはなにを見つけたんだ」
「虐殺には、文法があるということだ」

 

虐殺器官』 / 伊藤計劃

______________________________________________

第一次世界大戦以降、政府やメディアは国民を気分良く戦争に参加するためどのように情報を伝えてきたのか、をまとめている。

 

戦争プロパガンダ 10の法則

戦争プロパガンダ 10の法則

 

 

プロパガンダが用いる10の法則とは何なのか、それが目次として記載されている

第1章 「われわれは戦争をしたくはない」
第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
第4章 「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
第5章 「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
第7章 「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
第9章 「われわれの大義は神聖なものである」
第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

 

法則というよりも要素というか項目というか、よく使われるフレーズ集。目次をすべて繋げて盲目的に受け入れれば気分良く参戦できるかも。

そもそもプロパガンダとは

プロパガンダ(propaganda)とは、特定の思想によって個人や集団に影響を与え、その行動を意図した方向へ仕向けようとする宣伝活動の総称です。 特に、政治的意図をもつ宣伝活動をさすことが多いですが、ある決まった考えや思想・主義あるいは宗教的教義などを、一方的に喧伝(けんでん)するようなも のや、刷り込もうとするような宣伝活動などをさします。要するに情報による大衆操作・世論喚起と考えてよく、国際情報化社会においては必然的にあらわれる ものです。今日その方法は、必ずしも押しつけがましいものではなくなり、戦略化し巧妙なものとなってきています。

[三省堂辞書サイト]10分でわかる「プロパガンダ」

 

いくつか気になったところを引用しておく、第3章「敵の指導者は悪魔のような人間だ」より

相手国の戦意を弱体化させるためには、まず指導者の無能さを強調し、指導者の信頼性や身の潔白を疑わせることが必要になる。

単純なものでは、まず敵方の「大統領」や「将軍」をかぎかっこでくくり、その権威に疑問を投げかける表記方法がしばしばみうけられる。カラジッチ「大統領」、ムラジッチ「将軍」といったものだ。

読者に対し、敵の指導者は正当な大統領や将軍ではないと思わせる技術のようなものが記載されている。読者に潜在的に伝えようとしているのかは分からないが、伊藤計劃の『虐殺器官』を思い出した。

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

虐殺には共通する深層文法があるということが、そのデータから浮かび上がってきたんだよ。虐殺が起こる少し前から、新聞の記事に、ラジオやテレビの放送に、出版される小説に、そのパターンはちらつきはじめる。

これはSFで現実的ではないけれど、他国の指導者の肩書にかっこがつくような不思議な文章を見かけるようになったら一度立ち止まって考えたほうが良いかもしれない。

 

誰であれ、自分が善の側にあり、悪に対してフェアな戦いを挑んでいると思い込むこと、思い込ませることは心地よい。自分が誠実であると思い込み、正当性のあるイデオロギーをつくりあげてしまう。
現代の「洗脳」技術は、かつてゲッベルスが実現できなかった集団幻想よりもさらに遠くへわれわれを導こうとしている。

あるユーモア作家がこう言っている。
「現代人は、かつてのように何でもかんでも信じてしまうわけではない。彼らは、テレビで見たことしか信じないのだ」

 

 「自分は善の側にいる」、「自分は他人の知らない事を知っている」と思い込んでいる瞬間に人は攻撃的になる。ユーモア作家は「テレビで見たことしか信じない」と言ったけれど、現代では「ネットで見たことしか信じない」という人もいそうではある。